理子ちゃんのこと(2)

続く、という風に書いて、しばし考えていました。これって書いてもいいものなんだろうか。でもその後、ちょっと本人に電話をして、書いてもいい、との了解をもらえたので書くことにします。
ちなみに夜中に電話したのですが、ブログに書いてもいいかな、と告げると理子ちゃんは少し照れたようで、私もとうとう文壇デビューなんね、などと言っていました。
…セツ子それ文壇デビュー違う、などと思ったけれど僕は口にせず、それはそれとしてありゃすごい才能だと思うよ、と褒めておきました。実際、何に使えるかは判らないけれど、凄い才能です。

理子ちゃんの絵の話です。
昨日は理子ちゃんの絵の線が、どうしようもなく震えて定まらず、鉛筆の持ち方を知らない子供の書いた絵であるというところまで書きました。今日はその続きです。
理子ちゃんの目には何か異次元的なものが映っているのかなあ、と考えながら時計を指差し、アレはどういう風に見えるの、と聞いてみました。理子ちゃんの答えは「ふつう」。
思わず笑ってしまったけれど、見えるとおりに書いてよ、と僕は頼みました。そうしてさらさらと出来上がった理子ちゃんの絵は、思ったより普通の時計の絵でした。ザ・拍子抜けとはまさにこのこと。むしろ、

「もうこれも覚えたから見なくても書けるよ」
ポッキーをくわえながらへらへら笑ってるんですが、でも、何か、違和感があるんです。なーんか違和感があるんです。それで、ふと思いあたり、もう一回書いて、と少し慌てて言うと、理子ちゃんはびっくりしたみたいでした。
「何を」
「じゃあ、ドラえもん
「いいけど」
出来上がったドラえもんは、線の曲がる具合から目の位置まで、ひとつ前に書いたドラえもんとまるでおんなじでした。並べて見るまでもありませんが、並べて見ると軽く鳥肌が立ちました。理子ちゃんは、意図的に「子供の書いた絵」を描ける。しかも、同じように何度も描ける。これってものすごい才能じゃないか。
思わず、うおおおお、と大声を上げると、今度こそ理子ちゃんは軽く飛び上がり、ななななによう、とちょっと涙目で僕を見ました。
「これ凄い才能だよこれ、ほんと凄いよこれ」
興奮の余り僕は「これ」を何度も叫び、理子ちゃんは多分、あまり訳も判らぬまま、そうかな、照れるな、などと照れていました。

でも本当に一番鳥肌が立ったのは、一昨日のことです。昔の自分の絵だとかを整理しているときに出てきた、理子ちゃんの書いた絵を、ほんの気紛れで重ねて、明かりに透かしてみたんです。ぴったり一致してました。震えも、線の途切れ方まで、ほとんどトレースしたと言っても過言ではないくらい、ぴったりと当てはまっていたんです。僕は書いていた現場に居合わせたのですからトレースでないことくらいは判っています。もう背筋が、ぞおっ、としました。
というわけで、皆さん身近に天才がいましたよう。というご報告。
信じられないかもしれないけれど本当に作り話。たぶん今度テレビとかにも出るぞう。