水滸伝13巻感想

白虎の章。このところ、再構築された人間関係が深まる前に死ぬったら死ぬ感じばかりであります。
梁山泊の方針として、それまでの人間関係が深い人々は別々に配置する、というのがあるそうです。そういうわけで、因縁のない人々が共に戦って死んだり死んだりします。中だるみというよりは駆け足の巻のように思います。
それでも特記すべきところは幾つか。

呉用涙目。
これは、実のところ僕などは非常に思い入れのある人物なんですが呉用。いわゆる頭脳担当です。常人離れした豪傑か技術特化したスペシャリストの中において貴重なジェネラリスト。そのジェネラリスト呉用が端的に言うとスペシャリスト達から「お前はジェネラリストじゃないほうがいいんじゃないか」、という意見をされるわけですね。これはまあ、衝撃的といえば衝撃的です。代わりがいないから限界超えて仕事してたのに失敗したらいきなり文句かよ、というような、なんか素直には納得できないものがあります。君達もっと言い方というものがあるでしょうに。みたいな。
実生活でもこういうことはすごくあって、仕事というよりも特にサークル活動なんかしていると特にこういった批判にはさらされる部分がありますよね。普段人のまとめ役をして調停してうまく丸くおさめている人が問題の当事者になったら、その人以外にまとめ役をしてくれる人がいないから結果的に誰も味方してくれない孤立状況になってしまう、なんてザラです。そんな中、なんとか軟着陸を行った呉用には今後も強く生きていってほしいけれども、やっぱりジェネラリストに対して引き継げない実務を負わせるのは正気の沙汰じゃない、というのを強く感じた出来事でした。後日談として、皆それぞれ言い過ぎた、と思ってくれていたのは救いだけれど、実生活ではそういう出来た人物はなかなかいないからなあ…。
水滸伝三大名物の役割が決まってきた件。
三大名物は言わずとも知れる「魚肉入り饅頭」「顧大嫂の焼饅頭」「解珍のたれ」ですね。ここに李逵の腰の袋のアレが加わって4大名物になるわけですがともあれそれぞれの名物の使われどころがちょっとアレになってきました。他に喰うものはないのか、みたいな。いや、実際に「水滸伝のアレ」と評したメニューが居酒屋にあったら割高でも絶対食べてみたいのだけれどともかく。
魚肉入り饅頭→かなしいとき食う。夜食う。昔を懐かしみながら食う。梁山泊軍設立メンバー御用達メニュー。
焼饅頭→会議の後に景気づけで食う。昼食う。梁山泊に初めて来たらとりあえず食う。梁山泊軍新メニュー。
解珍のたれ→特別なときに食う。めったにくれないという設定で食う。解珍とサシでしか食えないから食う。獣を食うときに必ず思い出す裏メニュー。
これらの食べ物が出てくることで場面がどういう場面なのかわかるのはちょっと困りものですがとりあえずうまそう。個人的にはどのメニューも「独自の名前」が付いていないのがミソかと思います。「解珍すぺしゃる」とかじゃなくて「解珍のたれ」。何回も出てくるんだから固有名詞にしてあげてもいいのにしない。それはこだわりなのかそうでないのかは作者のみぞ知る。

あとは李冨が聞煥章の変態告白以来ちょっと距離を置いた気配なのが面白いです。多分その溝はあの告白のせいだと思う。勝手にすっきりされては困ります。