エコエコアザラク。長文ですよ。

さてさて。久々にパソコンつけました。ごきげんよう。ヲベロン太の社会派ブログの時間がやってまいりました。
本日のお題は、ずばり、再生紙の古紙率偽装のお話です。わたくしヲベロン太、実はエコ関連(うわ、胡散臭い!)のお仕事をしておりまして、実はこういう問題の内情には詳しいのであります。まさに関係者のブログだ。時の人だ。わっしょい。キンキーン。
さて。
古紙リサイクルと銘打った紙にちゃんと古紙を使っていなかった、という一風変わったこの偽装、ちょっと事情があります。「賞味期限を偽装してしまいました!本当は三年後まで食べられるのに一ヶ月と表示してしまいました!普通の牛肉と書きましたが、実は最高級松坂牛でした!申し訳ない!責任とって切腹します!」みたいな、コントみたいな話に聞こえますが、実は本当にちょっと違う。

古紙リサイクルが、実はそんなにエコじゃない、というのが世には知られておりませんが実際の話なんであります。

確かにあまった紙をただ燃やすのではなく再利用してもう一度紙にするというのは、確かに健全なリサイクルに聞こえますが、紙の製造工程を見てみるとちょっとキナ臭くなってきます。
まず、紙というのはパルプをちぎって寄せ集めただけでは製品にならず、表面に薬品を塗って完成となるわけです。アート紙とかマット紙、グロス紙、これらすべて塗る薬品の量や違いで品質が変わってくるわけであります。でもって一般に品質の高い紙ほど、この薬品の量が増えてゆきます。こってこてに塗りたくります。この表に塗る薬品が、実はあんまり環境によくないものでありますというのが最初のお話。もっとも、今の工業製品の中で沢山使った方が環境に優しい、なんてものはほとんどないので、当然のことではありますがともあれ。これが第一点に押さえておくべきポイントです。
『薬品が増えると環境負荷が高い』。コレ。

でもって紙を作るうえで大事なのは顧客の要望であります。やっぱり、再生紙、という響きは環境に優しそうなイメージですから、企業姿勢としてエコに取り組んでおります、というのを示すために再生紙を使用したい顧客はたいへん多くなっています。実際、再生紙も売り出した当初は環境に優しいとアピールしていたので当たり前の話でありますね。確かに木材資源だけの観点から見れば、再生紙はやっぱりエコなんです。
ですが、一つだけ問題点があります。再生紙、つまり一度インクに汚されたり風雨にさらされた紙を使う以上、やっぱり品質は落ちてゆくんですね。なかなか真っ白な感じにはなりませんし、紙の中にちょこちょこ取り切れなかったゴミなんかが埋まったりもしています。
それを理解して使ってくれる人が顧客であれば、何も問題はありません。エコならちょっとくらいアレでもいいよ、という心意気を持った顧客、まさに個人の消費者が対象であれば、再生紙はエコ価値の高い商品なんです。
ですがここでポイント2、なんです。
『品質を落とせない紙がある。しかも多い』コレ。

社内で使うコピー用紙とかなら構わないんでしょうが、実際のところ紙をもっとも多く使うのはカタログやチラシなどの印刷物です。たとえばこれらの紙の品質が落ち、売り出したい車の色がくすんで見えてしまったらどうだろう、ということをやはり企業は考えるんですね。再生紙にしたせいで新商品が売れなくて潰れる、というのはゴメンです。このため企業は、再生紙は使いたいが品質も落としたくない、という矛盾を常に抱えて再生紙と付き合っていくしかなくなってしまうんです。
その結論が、薬品です。確かに古紙を混ぜても表に塗る薬品の量を増やせば「再生紙であっても品質が落ちない」という紙を作ることは可能です。また、実際そうやって作られているのが現状です。ですが、これ、当然ですが環境にはあんまり優しくないですよね。薬どばどば使ってるわけですから。

こういうわけで今の再生紙は、森林資源の点だけ見ればエコですが、地球環境全体を見ると、そんなにエコじゃない、ということが最近わかってきたんです。

で、まあ、これだけならばありきたりのあちらを立てればこちらが立たず、でありますがここで飛び出してくるのが最近始まったムーブメント。FSC 森林認証制度、というやつであります。
別に利権とかないですけど紹介。今、総合的に見てもっともエコっぽい紙といえばコレですと断言しちゃってもいいんじゃないでしょうか。
原料にヴァージンパルプを使いますがその分植林することが保障されてるので、限りある資源をチマチマ使って節約するだけじゃなく増やしていこうという意気込みが感じられます。これなら紙を作るうえでの薬品も少なくて済みます。古紙混ぜないので品質だって折り紙つきです。
しかしこのFSC認証紙、現在ちょっと値段高い。といっても二倍も三倍もするわけじゃなくて、ちょっとだけなんだけど、高いんです。

ここから生臭い話になってまいりますが、企業がエコに投資するのはなぜかという話なんですね。これ、もう理由は一個だけで、「その方が儲かるから」なんです。当たり前の話ですが、環境に配慮してたら会社潰れた、というのでははっきり言って意味ありません。
一般的な考え方からしても金銭コスト的に同等かそれ以下であればイメージがよいエコの方を選びたいのが人情。ここまでは問題ありません。では、エコの方がちょっと値段が高い場合はどうするか。これが分かれ道なんです。
個人消費者の場合、消費電力とかそういうのを計算して××年で元が取れる、とかなんとか計算してエコを選ぶ人もいますね。また、ちょっとくらい高くてもやっぱり環境コストを減らしたい、という心意気で選んでくれる人もいると思います。
ですが、企業の場合は心意気だけでは動けないんです。エコにコストをかけてイメージアップを図った見返りに、コスト以上の利益が上がらないとダメなんです。潰れちゃうから。イメージアップによる効果を計算して、十分採算が取れると判断すれば、そりゃエコ選びます。

で、今、前に説明したFSCが流行してるかというと、答えはノーなんですね。再生紙よりコストが高くなってしまうのは、やっぱりまだまだ企業には受け入れられる状況ではないようなのです。
エコだと思ってたのに騙された!という企業の意思表明は、ちょっと微妙なのよね。他にもっとエコいのあるじゃない。とか思ってしまうんです。
そういうわけで今回の偽装については、歯にものの挟まったような気持ちで見ていましたが、どうにも。
うん。
業界に一枚絡んでいる以上、偽もん売られたッ、というのは腹が立ちます。実際、再生紙は最近品薄とかでお値段、高くなってました。薬品を減らすというのはイコール紙会社にとっては原材料が減るわけですからコストを減らすのと同じです。経済活動ベースで考えると許しがたいズルです。
ですが、地球環境ベースで考えると、「古紙配合率を下げた」=「薬品の量を減らした」=「環境負荷を減らした」なので、エコには貢献してるんですよね。
なんともはや。こういうことを考えてしまうと、ちょっと微妙な気持ちになります。

ほんとうのエコはどこだ!?

今回、意を決して書いてみたのは、意外と皆これ知らないんだなあ、とふと気付かされたからでした。
アンフェアトレードチョコレートとフェアトレードチョコレートだとか、ウズベキスタンのコットン奴隷とTシャツマニアとかと同じです。知らない人はずうっと知らないまま過ごすんです。
出来れば、この記事がなるべく沢山の人に知られますように。

つってなんか初めて書くな。こういう感じの記事。なれないことしてごめんなさい。ちなみに製紙会社の回し者じゃありません。FSCの手先でもありません。