ゆきぐに

北に来ています。
視界のものすべてが真っ白で、目がどうにかなったかと心配になってしまう田園風景。誰もまだ歩いていない平原。
生まれた土地から、気軽に歩いてこられる距離じゃないし、僕がずっと古くに生まれた子供だったら、こんな風景があること自体を信じなかったんだろうなあと思います。
雪はちらほら。山の上の方だけを霞ませて、街はどこまでもクリア。氷の底にいるような視界です。
ここは雪国、恋人の生まれた国。恋人はともう、伴侶の仲になってしまったのだけれど、一人で新幹線に乗っている時だけは、恋人と呼びたいように思います。
グラスの底を、小さい小さいボリュームの音楽のように走る新幹線に乗って僕は、迎えの車の中できっと音楽を聴いているあなたの元へ向かうのです。
もうすぐ終着駅です。

機会がないとなかなか遠出をしないのだけれど、出かけるだけでも楽しいものですね。
わたしやあなたや、これを読んでいるすべての人に、来年が素晴らしい年になりますように。