憎しみで

人を傷つける物語を作ってしまうことを、とてもおそれる人を見た。
臆病とは違うと思うが、確かに優しさとも少し違うと思う。いっぺんやってみるとよいのだ。

多分、物語の形をとってしまうと憎しみは人を傷つけられない。傷つくのは自分だけだ。
自分に限っていうなら、僕は自分でつけた傷で死んでしまうほど軟ではない。血が出るというなら殺せるということだが、死なない程度なら受け止められることだ。

人を傷つけるために書く物語が、あなたに傷ついて欲しいと願う物語が、果たして僕以外を傷つけることがあるものか。
どうなのだろうと思いながら僕は君に手紙を書く。手紙を書いたんだ。