春分と整合性

あのさ。 
君がここを見ているけど「みてない設定 」にしてるって前提で書くよ。だから、いつかまた会った時にここで目にした僕の気持ちや反論についてはスッキリスルーしてくれていい。いや、むしろスルーしてほしい。答が出たなら聞くけど、出ないだろ、そんなもの。
僕は、話しかけられたらそれなりに白黒つけなきゃならないような対応をしちゃうから、きっとまたケンカになるだろうし、別にこんなこと、白黒つかなきゃ友達でいられないような大事なことじゃない。  
こんなつまらないこと、友達を辞めるほどのことじゃないんだ。君がこの手紙を読み終える頃、もういっぺん書くよ。 読んでるうちに多分君は、忘れてしまうだろうからね。


あのさ。 
君の作ったっていう「自殺サイト」 、見てるよ。見てるよっていうか、ずっと前から知ってる。僕のカテゴライズだとありゃ、サイトじゃなくて「自殺志願者を集めた掲示板」だけど、とにかく、見たよ。君がカウンタ回してくれっていうから、時々、五回くらいF5してる。
君は、 「俺のサイト見たこともないし業界の惨状も知らない癖に」って言ったけど、君が前に見てくれって言ったんだよ。忘れちゃったのかな。
 
まあいいよ。 
君が忘れっぽいのは知ってる。 だからこの手紙を書いてるんだしね。
「業界」ってのが、何を意味してるのかわかんないけど、でもそれが「自殺するひとの辺縁」ってことなら、僕にも多分、業界の惨状、ってやつに一言申し上げる資格あると思うんだ。
だって去年、僕の母は自殺して死んだんだもの。

言ってなかったっけ。言わなかったかな。言わなかったよ。そりゃそうさ。だってそれはとてもプライベートなことで、特段言いたいことじゃなかったし、 言うことで何かの資格を得られるような事じゃない。
ただ、肉親が、自殺して、死んだ。予兆はあった。僕は止められなかった。ただそれだけのことだもの。 
 
とりあえず、僕は言いたくなかったことをこうやって公開したんだ。君の基準に則ったなら、少しくらいものを言っても許されるんじゃないかな。
意地悪な言い方だけど。  
その上で言うけど、 やっぱり僕は、無意味だと思うよ。君のに限らず、すべての自殺掲示板。なくさなきゃダメだ、なんていうつもりはないけど、残さなきゃダメだ、って君が言い張るなら、やっぱり「それほどものもじゃないよ」って言うしかない。
だって、死ぬもの。…なんて言うと少し反論の余地ない言い方になっちゃうけど、やっぱり死ぬひとは死ぬし、死なないひとは死なないもの。心から祈っても、死ぬ人は死ぬもの。
 
僕は、自分の母親の自殺を予見出来たか、止められたか?って聞かれたら、多分答はイエスだよ。   
そう答えるしかないと思う。 
24時間付きっきりで、自分の家にも帰らず、トイレにも行かないで見張ってたら多分、止められたと思う。仕事辞めて泊まり込んで、自分の全てを犠牲にしてたら、止められたと思うよ。胸騒ぎがした夜、根拠がなくても、無駄足になっても、あの夜にタクシーで二時間半かけて行ってたら、ギリギリ間に合ったかもしれない。  
そうだよ。
「止められる可能性はあった 」んだ。
でも、僕はそれをしなかった。会社は辞めなかったし、結婚したばかりの自分の家にも帰った。   
母親が自殺せずに生きていてくれると「信じた」んだって言うのは少しおこがましいかな。そうだね。
 
ソリッドな言い方をしよう。あの時の僕は、自分の実の母の自殺を止めるためのコストに、制限をつけたんだよ。「仕事を休まない」「夜は自分の家に帰る」「自分の生活を守る」。それだけだけど、でも、結果として、そのせいで僕は母の自殺を止められなかった。  
これって、君の言う「止められる自殺を止めなかった罪」 にあたるのかな。     
「俺ならお前みたいに薄情なことはしない」って言うかな。それとも「お前は、本当は母親に死んで欲しかったんだろ?」かな。でもそれでオッケーだよ。 僕は冷たい。お葬式でも泣けなかったし、もしかしたら、本当に君の言う通りなのかもしれない。
もしかしたら僕は、繰り返す母の自殺予告に疲れちゃって、いっそ死んでくれないかな、って、思ったのかもしれない。今となってはもう、うまく思い出せないし、思い出しても仕方のない話だ。
 僕の抱えていた問題は、ざっと言ってそんなところだ。知らなかったろ。君の口ぶりときたら、僕はのほほんと生きていて、恵まれていて、虐げられた人の気持ちなんてなに一つ分からないやつみたいな扱いだったもんな。
 
君が僕に絶交を言い渡した日、僕が君に言ったのはさ、すごく単純なことだったよね。本当に単純なことなんだ。  
「また俺の自殺サイトで自殺予告があるかもしれないからチェックしなきゃならない、そのためにお前のスマートフォン貸せ」 っておかしくない?
それだけなんだ。 
そして僕は自分の端末の提供を拒否し、君は「自分のやろうとしていること」 を説明しようとし始めた。まるで、説明すれば僕が理解して端末を渡すと信じてるみたいに。 
もしかしたら違う理由だったのかも知れないな。本当に誤解されるのが嫌だったのかも知れない。
 
だけどね。
僕は心底関わりたくなかったんだよ。君のしようとしていたすべてのことに、関わりたくなかったんだ。
僕の事情についてはさっき説明したね。  
僕にとってみたら、自分で自殺志願者を呼び寄せてるって時点で正気の沙汰じゃないんだよ。自殺しようとしてる人を止めるなんて、お金もらっても二度と御免だって思う。  
見ず知らずではない、匿名でもない人から、あなたのせいで死に損なった、って責められる気持ちって味わったことあるかい? 今電話を切ったら死んでやるからって言われたことは?実の母親より仕事なんかを取るのね、って 呟かれた経験は?
 
まあいいよ。
別に僕は実際の経験の有無が 発言権に結びつくなんて、そんな下らないこと考えてない。それに、君だって「自殺サイトの管理人」なんだ。その程度のことは日常茶飯事に経験してるのかもしれないしね。気にせず、君は君のスタンスで好きに言ってくれていい。   
ただ僕は、「俺は人の自殺の防波堤なんだ」って鼻から息を吐く君の、そのドヤ顔を、認めることは出来ないんだ。過去の自分自身を許せないようにね。  
  
確かに「自殺予告はガチで禁止だけど自殺について語らう掲示板」、ってルールはユニークだと思うよ。それで救われる人もいるかもしれないし。救える命なら救えばいい。  
だから、 それが君の趣味なり実益なり、それこそ使命なら、それでいいよ。止めないし、好きにやればいいと思う。 君の手に負える範囲ならね。 
でも、メールチェックすら自分の携帯で出来ないなら、行動以前にツール問題ですら君の範疇を超えてるんじゃないかな。 
君の世界でやる分にはどんな悪徳も善行も、偽善も献身も構わないんだ。よほど目に余れば、それどうなの、くらいは言うかもしれないけど、基本的には好きにやりなよ。止める気も権利も、僕にはないからね。
君の世界に生きている時間なら好きにするがいいさ。
でも僕の世界に入ってくるなら、君が、君だけの世界でそうするような振る舞いを認めるわけにはいかない。 
 
君がしたことを考えてみよう。   
今回、客観的に見て君がしたのは、死ぬ死ぬって騒いでる掲示板の住人をアク禁にして逆上させて、「あなたのお陰でマジで死ぬ決心がつきました」 って言わせた。それだけだよね。
その後に警察に通報したんだっけか。相手にされなかったんだろ。 そりゃそうだよ。どっからどう見ても、君が全部のお膳立てしてるもの。
場所を作ったのも君だし、煽ったのも君だし、最後に火をつけたのも君だ。
そりゃお巡りさんだって言うよ。自分でケツ拭けないこと始めるのは、もう少し大人になってからにしてくれないかなあ。って。
「誰も話を聞いてくれないの?死にたいの?誰にも話せないの?俺たちが話を聞くよ?」って言っておいて、あんまり死ぬ死ぬ騒ぐならお前から発言権を取り上げるぞ、って、そりゃ死にたくなるよ。誘っといてそれかよ。最後のひと押しだよ。   
 
さっきも書いたけれど、遊びの片手間で救える命なら救うといいよ。心の底からそう思う。実際僕も、同じことをするだろう。片手間で救える命なら、何も死ぬこたねえだろ、って助けてみるだろう。
 
でもその責任を僕に押し付けないで欲しいんだ。お前が自分の端末を貸さなかったからアイツは自殺するかも知れない、って悪い冗談だよ。 僕を、君の趣味に、巻き込まないで欲しかったんだ。御免なんだ。もう人の自殺とかに首を突っ込むのは。 
 
身の丈を越えたことしてもいいことないよ、って僕が言ったら、君は弁解をしたね。   
「俺の携帯でも出来ないことはない。ただ、面倒なのと、今回は緊急性が高いからだ」 って。「スマホの方が速いし、楽だし、すぐ終わる」「流石に人の命がかかってるんだぞ」って。
じゃあ、最初からスマホ買えよな。
 
そもそも、キーロガー入ってるかも知れないしクッキーの設定がどうなってるかも解らない他人の端末で webメール開いちゃうようなセキュリティ意識もどうなのって思うし、人の生き死にがかかってる問題を抱えてるって言うなら、その状況で手ぶらで遊びに出て来る神経ってのもわかんないよ。その前、きっちり四時間遊んでたじゃない。それで自分の携帯を使う五分間が我慢できないって、どんだけ小学生だよ。とは思う。
              
僕は、君のその「サイトチェック」が、駅に帰るまでのお喋りぶった切ってやる事なの?って聞いたよね。  君はまた、流石に人の生き死にの問題なんだって激昂しかけたけど、僕にとっては「その程度のこと」なんだ。  
自殺するぞと主張してる名前も知らない誰かの悩みと、 僕が君と話したかったことと、どっちが大事なのか決めるのは君の判断。だから僕の話したかったことは軽いと決めるのも君の判断。

仮に僕がすごく大事な相談をしようとしてたとしても、君のその判断は揺らがなかったのかな、とか、ちょっとは考えるけど、でもそこは君の価値観で優劣を決めていい話。当たり前さ。
君の世界だもの。 
僕がその点について一言でも「君の視点はおかしいから改めろ」って言ったかな。言ってないよな。僕はそんなこと言わない。
「僕は、そういうの好きじゃない」 「僕は、気持ち良くない」「僕は、協力する気になれない」別に君にどうしろなんて強制してないだろ。僕が僕のスタンスを明確にしただけの話だよ。
 
僕が君に言ったのはさ。
「友達との時間を犠牲にしたり、人に端末借りなきゃ必要な時にアクションできないなら、その掲示板管理は君の身の丈を越えたもんなんじゃないの?」ってだけだぜ。 それって、そんなにクリティカルかい?
 まあ、それに怒るのは勝手だけど、勝手に一方的な絶交メールなんて送りつけるってのは、正直どうなの?とは思う。

君が、さ。
社会から弾かれた自殺志願者を受け入れようっていう高尚な意思の持ち主である君が、だよ。  
対話で自殺を止めようって気高い理想を持って掲示板を立ち上げた君がだよ。 
たかだか端末を貸してもらえなかった程度で、「そういうのって身の丈を越えてると思う」って言われた程度でいきなり対話を打ち切ってさ。 
怒り収まらずに電話してくるならまだしも、メールで僕のことをさ、「自殺志願者の辛さも解らない隔離主義者」呼ばわりして、「無能な警察と同じこと言いやがる」とこき下ろして、不愉快だ不愉快だと君の気持ちを連呼してさ。 挙げ句の果てに一方的にエキサイトして、「今後の連絡は御免こうむる」、なんて捨て台詞を投げつけちゃってさ。    
 
そんな姿を見て、僕が何かを感じると思う? 
僕のことを傷つけてみたかったのかな? 
ただ言いたかったから言っただけ? 
言い返されたら困るからメールにしたの? 
僕に何かを感じて欲しかったの?それとも、最近流行ってるの?それ。
 
君がよこしたながーいメールの中で、君は僕と「会話」 してるみたいだったけど、君が聞いた気になってる返事は、「僕の返事」じゃないぜ。僕は君が「俺は遊びでやってるんじゃないんだ」と叫んだのに返事もしてないし、「お前はプライベートタイムに会社から電話がかかってきても無視するのか?」と絡んできたのにも返事してないよ。  
君が聞いたのは君が作った幻の声。「君が正義の代弁者を気取るのに都合のいい小悪党」 って幻が、君を焚き付けた声だけだよ。それは本当に幻なんだ。そいつは、「君の中にしか」いない。   
アレが本当に僕への問いかけだったら、答はシンプルだ。「遊びでやってるんじゃないんだ」に対しては「あ、そう」。プライベートタイムの電話については、「時と場合によっては、電話には出ない」。これが僕の返答だよ。
それでも君は怒るのかな。 
 
どうだい。   
君は今、どんな気持ちだろう。僕には少し想像ができないんだ。きちんと怒って顔を真っ赤にしてくれてるかな。これだけ煽ったんだ。どうやって僕を論破しようか、頭をフル回転させて突っ込むところを探してくれてるかい? それとも、もう一度、今度は絶交だけじゃなくて脳内から俺の記憶を消去しろ、一緒に撮った写真も消せって、怒り心頭のメールを送る準備をしてくれてるかな。
そうだといいな。
君が、少しでも傷付いて、血を流していてくれないと、こんなに嫌なことを長く書いた価値がない。 
 
じゃないと、僕がこれから言うことは君に届かないんだ。
色々わからない事だらけだけど、ねえ、君、一個だけ解ることがあるんだ。      
君は、僕との関係は完璧に終わった、って思ってるだろ。もしかしたら君は、君の絶交通告に驚いた僕が謝って来るのを期待してたのかも知れない。それとも、もう君の中で僕は、友達リストからすでに外されてしまっていて、あの通告に僕がどんな反応を示すか興味本位で見に来てるだけかも知れない。  
でも、どっちにしろ、君は冒頭で僕が言ったことをもう、忘れている。 
『こんなの、友達をやめるほどのことじゃない。』
な、忘れてたろ。
僕が君を、あるいは君が僕を、決して許さないと思い込んでる。君は、こんなつまらないことを、重たく捉えすぎてるんだ。
こんなの、別に友達をやめるほどのことじゃないんだ。

確かに僕は、自殺サイトなんかを友人関係よりも大事に扱う君に腹を立てたし、 自殺のジの字も知らない癖に、というような言われようをしたことも胸糞悪いと思った。折角記憶の外に追い出しかけていた母の自殺を、野蛮なやり方で、無自覚に突きつけてくるそのデリカシーのなさには本当に呆れてる。

でもさ、そんなのは許せることなんだ。忘れられることなんだ。どうだっていいことなんだよ。
替わりに僕はこうやって、長々と君を罵っているわけだし。十分君のことを傷付けてると思うよ。僕が傷つけているのは空想上の、僕の中の君だけど。
君は、設定上もうここを見ないことになっているし、僕は実際の、現実の血を見たいわけじゃないしね。

いいかい。
君は、そして場合によっては僕も、今はただ空想のお互いを罵っているだけだ。
現実で、はっきり白黒つけたいっていうんなら、相手はするよ。でも、そうじゃないだろ。大事なのはそこじゃないよな。

極端な話、僕の知らない君がさ、釈迦も謝るレベルの聖人でも、エド・ゲインが正座するレベルの快楽殺人鬼でも別に気にしないんだ。貧乏でも蔑まないし、金持ちでもべつに尊敬しないよ。その辺の事柄で優越感や劣等感が生まれるなら、そっと話題を逸らすと思う。それは気遣いじゃないし、憐憫でも保身でもない。
話が、立場がズレちまうからだ。
友達ってそういうものじゃないのかな。
立場とか、地位とか、経験とか、そういうの飛び越えて同じ目線に立てる関係ってことが、大事なんじゃないのかな。そりゃ時には貸し借りとかもするけど、それでも、最後は対等になれるのが、友達だろ。

僕は、君の作った自殺サイトを忘れることができる。こんな、今まで散々disった後で悪いけれど、称賛を強要されない限り、君の世界の話だ。今までと同じように、君が夜に家でする全ての行為を、僕はスルーするよ。それは君のプライベートだ。ずかずか入り込んで「くだらねえことやめろやめろ」なんて言わないよ。品がないし、そもそもそんなことしたくないし。

では、君はどうだい?
君の自殺サイトを肯定してくれない僕とは、やはり付き合えないって思うのかな。君が求めているのは、「無批判に君の自殺サイトを肯定してくれる誰かさん」なのか?それとも「僕」なのか?

そう。このエントリは単に僕が、飲み込み損ねた悪い酒を吐き戻した路地裏のドブみたいなものだ。
君は、この長ったらしい手紙を、読まなかったことにしてパタンと閉じてもいい。
僕は、この手紙が届かなかったことにして忘れてしまってもいい。
僕がこの手紙を書いても、何も変わらなくてもいいんだ。
そういう結末でもいいと思ってる。設定上、そうなるのが当たり前の手紙だ。君は、君から一方的に絶交を切り出した。だから君はこのblogを見ていない。僕は、君が見ていないから、こんな風に君を傷つけるためだけに書いている。

あの日、僕が君に言ったことは意地悪ではないし間違ってないと今でも思ってる。それを君が許せないと感じるのも自由だと思っている。君と僕の間に起きたことについて譲歩する余地は少しもない。あの続きをするなら斟酌はできない。徹底的にやるしかないと今でも思うよ。

だけど、だけどね。
なかったことには出来る。同じことを繰り返さない限り。それを忘れることは出来る。
友達であることの大事さは、下らない自殺サイトで起きる凡百の出来事なんかより何千倍も大事なんだよ。この言い回し、気に障るかい。でも、もういっぺん言うよ。もっと酷い言い方で言うよ。
自殺サイトに集う人たちの苦しみなんかよりも、君の指に出来たささくれの方が、まだ僕は気になるんだよ。
僕はそれでいいんだ。名前も知らない誰かの苦しみや悲しみを背負う気はないし、僕にとってそれは心底どうでもいい話なんだ。僕は僕を生きづらくさせるものを背負えない。やれって言われても、やりたくならない限り無理だ。
僕は、僕は、って、同じことばかり呟いているようだから、今夜はもう止すよ。

もし万が一、このエントリを読んで何か思うことがあったなら、誰かに場所を聞いてさ、毎月の、ボルダリング部の集まりにふらっと来るといいよ。何事もなかったように、「最近筋肉が落ちてよぉ」なんてブツクサいいながら、来るといいよ。
悪いと思ってないなら謝らなくていいよ。僕だって、悪いと思ってないから謝らない。自分が間違ってないってのは、すなわち相手が間違ってるってことじゃあ、ない。そうだろ。
君があの日のことを忘れた風体でいる限り僕は、それを終わりにするでしょう。あるいは、言い方を変えるのなら、それを始まりにするでしょう。それでも外野で意地悪なことを言うやつがいたら、昔のことぐちぐち言うの止めろよって言うでしょう。

友達を継続するために嫌々飲み込むんじゃないんだよ。やり直せるから友人なんだ。そんなことを、最近すごく思うよ。あの日の続きをしたいなら、ちょっとうんざりするけど付き合うよ。そういうやり直し方も、ありだと思う。
僕らは、手を延ばしてつなぎ、あるいは殴り合う。友達どうしは、どうやったって、いつか、必ず相手を見つめるんだよ。背中を向けたらそれっきり、ってのは友達じゃない。

最近僕はそんなことをすごく強く思う。嫌いな相手とは無理に付き合わなくていいと思うけど、好きなものに囲まれて生きてないと死んじゃう、ってのも違うと思う。「つまらない理由で消えてしまう友達は、つまらない友達だ」って言葉が、頭の中をぐるぐるしている。
そういうのっていやだなあ、と素直に感じる。

でもこの手紙は、ここで本当にこれで終わりだ。そうしなきゃならない。僕は僕で、こうやって君と絶交する準備を済ませたよ。これを見て、ようやくきちんと双方の合意が済んだと思うか、もっと別のことを思うかは君の自由だ。

だからさよなら。あるいは、いつかまた。また会う日まで。