思い立ち九州。(1)

oberon2006-10-14


ふと思い立って東京脱出。ゆく宛はなし。目的もなし。そこに警句も、感傷もなければ九州。
朝一番の飛行機に乗って九州である。
眠たい目を擦り地下鉄、切ったばかりの髪を侵入風になぶらせて午前五時。

社会人になってよかったと思うのはこんなときだ。きちんと働き、見合うかどうかは審議が必要にせよ、真っ当なお金がわたしの口座に残っている。仕事は楽しいことばかりではないけれど、嫌になるほどのことはないつもりだ。
今では二ヵ月に一度は小さな旅行にだって行けるし、安売りのであれば、服を前に途方に暮れることもない。わたしは今、とてもみちたりていると思う。

わたしは空港へ向かう地下鉄の中、なぜだか学生時代に聞いていた歌を思い出していた。高校生の頃、どこへ行くにも制服のスカートだった頃、無性に欲しくなって買ってしまったCDの3曲目だった。まるで飛び降りるような気持ちで買ったのに、予想外れで少しがっかりしてしまったのは懐かしい思い出だ。それでも、自分のお金でCDを買ったということが嬉しくて、ずうっと聞いていた。ずっと聞いていたら、いつの間にか好きになっていた。人生は、そんなものなのかもしれない。
わたしは懐かしい気持ちを思い出し、地下鉄は空港に着いた。

初めての搭乗手続き、初めての空港ロビー。わたしは外を眺める。初めての景色を眺めては思い出していた。