思い立ち九州。(2)

眠っている間に九州は熊本へ到着した。目を覚ますと目の前には平らな土地が広がる。わたしは32800円を支払って来たことのない土地へと転送された。
目的もないので空港内をぶらぶらする。頭の中で待ち合わせる人を想像する。熊本の地にわたしを出迎えてくれる人はいない。わたしの世界はとても狭い。高校までの友達、あとは仕事を始めてからの、狭い町の、顔なじみばかりだ。嫌ではないが、時折判らなくなる。
わたしは自分がおそろしく軽装だということを思い出し、雑誌を立ち読みしながらくすくす笑った。昨日までに一度だって想像しただろうか。用もなくこんな遠くに来るなんて。レジの、少し四角い顔をした女の子が怪訝そうにわたしを見る。
ごめんなさい、違うんです、TVの番組表がおかしいんじゃないの、もっと個人的なことなんです。なんだか浮つくくらいに可笑しい。
ともあれ思い切ってわたしは空港のドアを出た。