パーフェクトブルー

酒を、酒を止められた…ッ。
とうとうお医者に酒を止められる始末。もう羽をもがれたも同然ですが、死ぬよりマシなので大人しくしたがいます。

そして遅まきながら今敏氏の訃報にふれる日でした。僕が初めて自分のお金で観たアニメ映画は紅の豚で、初めてオールナイト上映で観たアニメ映画がパーフェクトブルーでした。
パーフェクトブルーこわい、と見出しをつけてしまうとまるで落語ですが、とにかく人間が一番こわいよ、という強烈なインパクトを残す映画でした。

弔辞の代わりに、パーフェクトブルーのレビューでもしようかと思います。ネタバレ含みますので要注意。ぜひ色反転部分を読む前に本編を観てください。R15指定なので地上波は諦めてください。

さて。
あらすじは、売れないアイドルのミマちゃんが、売れるために変わってゆくお話。それを見守るマネージャー、ウルトラマニアストーカー、そして本人自身の、三者三様の狂い方が入り混じって、誰が誰で真実はなんなのか、観終わってからも意見の別れる怪作となっております。

これは本当にすごい映画で、現実と妄想との明確な境をどこにも描かないという離れ技を繰り出しているのです。観ようによっては冒頭から殆ど幻覚。観ようによっては描かれているもの殆ど真実。これってけっこう凄いことです。インセプションではある程度、現実と虚構の区別を明確にしていました。ノーラン話のわかる監督。ですが、こちらはそんな話のわかることなんてしないんです。
現実と妄想との境が曖昧になることの恐ろしさを描いて、逃がしてくれないんです。人間がマトモに見えている時は、箱の蓋が閉じている時だけ。箱の中にカブト虫が入っているのか、もっとおぞましい何かが潜んでいるのか、そして自分の知らない内に自分の知らない何かを詰めてしまっていることさえあるという話なんです。

メインストリームの認識でいうと、おそらくカメラマン殺しのほんとうの犯人は誰かというのが一番意見が別れるところではないかと思います。
僕的には、あそこだけはミマちゃん本人の反抗という解釈が一番怖いと思います。

エンドロールを眺めながら、あの歌を聞きながら、僕は問いかけます。
 冒頭のミマちゃんと、ラストシーンのミマちゃんは、果たして同じ人間 なんだろうか?
得体のしれない何かに中身を食い尽くされた後、残ったのは一体なんだ

怪作です。技巧的にも素晴らしいものがありますので、未見の方は是非とも。