レビュー(パート2)

先日に続いて今日は『冒険野郎のトムソーヤ』さんの発行物について。
まずは新刊、『ドッジボックル』から。トムこと武東宗哉さんの『勇者の行進』とハックさんの『また金魚姫』の二本立て。
『勇者の行進』は、一言であらすじを言ってしまえば、異世界から来た勇者が色々苦労した末に…という話。ですが、肝心なのはこのあらすじから想像されるような物語が展開されていないということです。例えてみるならば海沿いの道、前を走っている車がなんだかふらふら運転しているなあと思ったら不意に逸れてガードレールを乗り越え、乗り越えたというのにまだふらふらと海のほうへ宙をすべるように進み続けるのを目撃、うわあ大変な物を見たと騒ぎかける刹那、件の車はまたふらふらと戻って再び海沿いの道を走り続けるような、そんな物語です…とか言っても判りませんね。ええと、浮遊しているようで疾走していて、明後日の方向へ走っていってしまうようでいてきちんと作者の手綱の中にあるというかなんというか。あとがきでも述べられているように、前作に続いて再び「×××オチ」というのは別によくない要因ではなくて、ある種、芸だと思いました。すごく安心感のあるオチです。王道。
続いて『また金魚姫』は前作、『コバヤシライス』中の『金魚姫』の正当な続編。ちなみに僕、すでに更紗さんにキャラ萌えしているので正しい評価が出来ているのかナゾなんですが、非常に「正しい続編」という感じがしました。むしろ連載されているかのような錯覚を覚えるような、よいお話でした。前回に引き続き、主人公に恩返しをするために居候を続ける金魚姫のお話。筋というよりはディテールが面白い感じです。更紗さんの言動やリアクション、背景など、読むのが楽しいという感じ。しかし、それも話の流れに不安感がないからこそのディテール。勉強になります。まんがと小説で別分野の話ですが、僕などはディテールを描きたいあまり、話の筋に気を遣わないタイプなので見習いたいように思いました。はい。というか、更紗たんはあはあ。かわいい。
…にしても最近思うんですが、この「二人誌」という構成はとてもいいような気がします。うまく申せませんが、三人寄ると派閥ができるとイギリスで言うように、三人を超えると何がしかその本にも路線のようなものができてしまう(もちろんそれはそれで本としての構成が出来ていいんですが)ところを、二人誌だと、無秩序的が許されるというか、無秩序こそがダイナミズムを生み出しているというか、一冊一冊ごとに構成が真新しいものに見えるなあ、と。
そして、続いては一緒に買わせてもらった既刊、サークルとして初の創作漫画という
『メガトムゴン』と、その次の作品『キャベツパン』について。
この中でなんといっても白眉は『キャベツパン』収録のハックさん作、『小僧の神様』でした。タイトルからはちょっと想像がつきませんが、気弱なサドの女の子の家に使用人としてやってきた男の子の話。といっても主人公は男の子の方ではなく、気弱なサドの女の子。そして、これは、恋の物語なんですね。二人はまったく親しくないし、劇中で会話するシーンは一度きり。それでも、これはまったくもって深くて官能的な、恋の物語でした。巧みに落としどころやギャグを取り混ぜて絵柄もかわいらしく、表面的にはさらっとした全年齢向けのギャグマンガですが、静かにひたひたと迫る物があるなあ、と。ええ。なんと感想を言っていいのか分からないくらい、すばらしい短編でした。
そして後日談としてはさらに、こちらさまへもご挨拶に行った折、HHHさんと同じ理由によって驚かれてしまいましたのですね。たは、たはは。や、別に皆様をだまくらかそうとしているつもりはないんですが結果的にそうなってしまっていてヲベロン太反省。思い返してみると結構な確率で誤解されているのでここらでいっちょうババンと個人情報公開してみようかとか思ってみるんですが、web的には性別不詳でいたほうが楽チンなこともあったりなんたりで結局アレです。想像にお任せします、とか言うと宮様みたいでアレなんですが、深読みしなければたぶん想像通りです。

というわけで本日はここまで。次回は皆様お待ちかね!『MHR+』さんのネジヒナ本です。