再録!決意表明!

僕はもともとweb上で小説をちまちま書いていて、そういう活動などを通して人と知り合ったりしていくうちに、今のように同人誌などを作ったりしているわけです。
同人誌というのは、materialでして、まあ、お金がかかりますから作る以上は売りたいわけで、そうやって作った物に対してお金を払って読んでくれた読者の人に、ありがたいありがたい、と格別の思いを抱くのは自然のなりゆきというもので。
で、そんなこんなで同人誌活動に熱が入り始めると、今度は「お金を払って(≒webでクリックする以上の労力を支払って)まで読んでくれている人」のことばかり考えてしまうんです。
ふと気付くと、僕は、僕を生んでくれたwebの上ではろくすっぽ創作活動と呼べるようなものをしてないのです。なんというか、ここ数ヶ月の、職場変更や、失恋にまつわる幾面かの下降線や内省と相まって、非常に、この、考えるのです。

何か、世界が狭くなってるような気がするなあ、と。

お金というのはおそろしいものです。
おそろしいと僕は思います。
お金を使うことと小説を書くことが、いつのまにか、同人誌を作っているうちに溶け合ってしまい、小説を書くことが、そのままお金を使うこと、使ったお金を回収すること、そんなこととごくごく自然に連結してしまうんです。どちらが手段でどちらが目的か、ちょっとごちゃごちゃしてしまうんです。
たしかに資本主義の世界に生きているのだから、それは自然ななりゆきだと思います。純不純を論じるつもりはありません。この世に存在する全てのものは、存在すべきものだから存在しているのだし、自分の作ったものを世に問う、というやりかたに王道も覇道も邪道もありません。己が是と思えばそれでいいと思うんです。
でも、もともとあったはずの「手段」と「目的」の別がはっきりしなくなるのはイカン、と思うんです。なにやら判らないけれど、僕の中の何かが囁くのです。「その先は、行き止まりよ」と。僕はもともと、お金を手に入れるために描いてるわけじゃないはず。それははっきりさせなければならないんです。
というわけで、勝手に自分ルールをひいて、これから少し挑戦してみようと思うんです。
お金を払って本を読んでくれる人がいる、というのは勿論嬉しいことです。実際、義理とかそういうのも含めてでも、本を買ってくれる人がいるというだけで、生きててよかったあ、と思います。 でも、そこに甘えていてはいずれ、袋小路へ落ち込んでいってしまうと思うのです。
誤解を恐れずにいえば。
お金をかけて作った本が、webで同じ内容を読めるというたったそれだけのことでいきなり価値をなくす(あるいは著しく価値を下げる)のではないか、という怖れのようなものを、自分の手で、パッキャーンと打ち壊してみようと思うのです。
僕はもともと、たくさんの人に読んでほしいだけだったのです。僕が書いたものを判ってくれる人を探していただけだったのです。僕自身が、書くことによって少し楽になるように、僕が書いたものを読んで少し楽になってくれる人がいればいい、と、そんなことを求めていたはずなのです。
本を作るのは、せっかく書いたのだからまとめて形に残しておくか、というくらいのことで、「僕の書いた新しい小説は本を買わないと読めないよー」というレアリティが付加されてしまうのは、やっぱり何か違うんです。いやまあ、別に有名人じゃないしそんなレアリティに価値あるかないかっていったら別にないんですが、どうにもwebの上流にmaterialがあるのは何か違う。違うって気がするんです。
僕、やっぱりwebが好きなんです。言葉と色と線だけで作られた世界に、肉体を持ったまま参画するという、それが好きなんです。
materialから流れてきた古い言葉を拾って、形を整えてwebで公開するのではなくて、webで踊っている、色褪せることのない、生みだされたままの言葉を、私家版の博物誌をつけるような感覚でmaterialへ落とし込んでゆくような感覚の方が、たぶん、僕には合ってるんです。
大多数の人にとって、別に労苦もなく手の届くところに僕の書いたものは置いておきたいんです。一度咀嚼したらあとは古くなるだけの単なる「情報」ではなくて、時折読み返したり、思い出したりできる「物語」であるものを書きたいんです。
僕にとって、いつか読み返す時に便利なグッズとして「僕が書いた本」はあればいいんです。読み返すときにweb越しで不自由を感じない人がいるのであれば、それはそれで構わない、と思うんです。
だから。
これから書く小説は、webで公開して、それから本にします。しばらくは順序前後するかもしれないけど。ともかくwebで、タダで読めるというのにわざわざ本を買ってくれる人がこれからもいたとしたら、そんなうれしいことってないじゃない?
と思ったのだけれど。
どうかしら。
なんつって問いかけて終わると切ないことになりそうだからよそうかと思いつつやっぱり問いかけて終わります。
どうかしら?
ともあれヤルヨッ。