レビュー。

ではレビュー。ほとんど頂いた物ばかりになりますがまずはHHHさんの発行物から!
今年の新刊は『万國ファンファーレ』です。コピー本なんですが、表紙の紙だとか色の感じだとかがとてもいい風合いでした。一版多色刷りみたいな。
さて、内容は藤ノ木いらかさんの『温室の家』と衣羅ハルキさんの『QPプロジェクト』の二本立て。『温室の家』はホームヘルパーの女性と昔の恋人との再会を描いた一編。前にとりあげた『アナザーエディション』を読んだ時も思ったのですが、作者の方の職業がほんとうに気になるお話でありました。なんというか、劇中で説明されないディテールというか、たとえば『アナザーエディション』で主人公が押し付けられていた仕事(うろ覚えですが「午後までにこれ○○部作っといて」とかそんな感じ。何を作るかについては説明されてなかったような気が)だとか、今回のさつきヘルプサービスの事務所の風景だとか、そういうディテールがすごく自然な感じがするんですね。自然な感じというか、これも背景力ということになるのかもしれませんが、物語自体が割と唐突に始まるのに違和感がないんですね。やはり、『アナザーエディション』で感じた「ちゃんとした漫画のにおい」は間違いではありませんでした。もし、作者の実生活に関連のない舞台を描かれているのだとしたら、この取材力は神。ええ。
話の内容についても、あらすじを書くのが野暮な風合いの、じんわりしたものでした。時折よみがえる記憶や、過去と現在の対比も、しっかりとすべて地続きで、なんていうんでしょう。そう、好きな感じです。人の人生を少しだけ切り取って見せてもらっているような感じ。推測するしかないようなものもあり、語られないものもあり。いつか僕もこういうものが書けたらいいなあと思いました。
そして次の『QPプロジェクト』はうってかわってすこーんと明るい話。女性が苦手な年上の友人へお見合いを勧める若い二人の話。
前の話を読んだすぐあとだったので、脳が切り替わってなくて、そのせいもあってかものすごくギャップが面白かったように思います。導入部分が軽くしっとりした雰囲気を匂わせているので、後半数ページの加速が、よい意味で予想を裏切るというかなんというか。よい、面白い漫画でした。やはりギャグは真顔で。真顔でボケろというのは名言です。こちらも「ちゃんとした漫画のにおい」を裏切らない出来。短い紙数なのに各人のキャラクター性がすごくつよいというか、もう随分続いている漫画の「いいところ」の回を読んだ気分になるところはとても素敵でした。
続いて、恐れ多くもいただいてしまったんですが藤ノ木さんの個人誌『海に出る川・山の灯り』、藤ノ木さん衣羅さん百井さんの三人誌『Rainbow』の二冊。
同じ出来事を少女・少年の二人の視点から描いた『海に出る川・山の灯り』について。一言でいいますと、いやあ、非常によかったと、こう言うしかありませんねえ。同じ出来事について描いた、と紹介しましたが、厳密に言うと、「同じ出来事を含んだ」物語なんですね。正確にはまったく独立したといっても差し支えない二編なんです。最初はうまく全体像がつかめないのに、何度か読み返すうちに自然と頭に入ってくるというかなんというか、物語の「切り取られ感」っていうんでしょうか。自分とは違う考え方をする違う人の、その人なりの人生の一場面を説明ナシでトンと提示された感じというんでしょうか。
当たり前ですが自分で書くものはある程度自分が理解できるタイプの登場人物が出てくるわけですから、自分で書いたものについてこういう感覚って味わえないわけで、そういう意味では「こういうのが読みたいが、どこにもないから自分で作ろう」と思っても決して僕では作れないんじゃないかなあと思うのですね。コレ、もしも藤ノ木さんが登場人物について「自分とまったく違うタイプ」と認識して描いているとしたらもう、ひたすら脱帽するしかありません。というか、そういう気配がしますので先に帽子は脱いでおくことにします。
最後の『Rainbow』は「色」をテーマにしたショートコミック集。個人的には黄色の話と、青の話がとても好きでした。というか、ダリア先輩はあはあ。

そして、そうそう。HHHさんには挨拶に行った折、ヲベロンの性別が予想していたものと違っていたせいでたいへん驚かれたというオチがつきました。あまりのことに動揺して、こちらも何を口走ったかよく覚えておりません。たぶん相当失礼なことを言ったりしたと思うんですがまことにもってごめんなさい。

っちゅところで時間が来てしまいました。
続きは明日以降に!次は『冒険野郎のトムソーヤ』さんの発行物について書く予定!